渋谷駅から徒歩15分ぐらいのところに、
24時間営業のうどん屋さんがある。
先日知り合いに仕事の休憩時間に連れて行ってもらい、
意気揚々とうどんとてんぷらを購入。
『はなまるよりてんぷらデカいし安いっすね!』
上機嫌でそう言う俺に、
連れてきてくれた人は笑顔でうなずく。
そこでその人のトレーの上を見てみたら、
うどんが乗ってない。
『?』
確かに米とてんぷらだけでも十分食えるけど、
この人はこう食べる人なのか?
天丼にでもできるなら話は別だが―――
思っているとその人は、
トレーを持ったまま席に着かず、
店の端っこに移動した。
何してんだろうと観察してみると、
なんとそこには天丼のタレが!
『ちょ、
天丼にできるならそう言って下さいよ!
知ってりゃ俺も天丼にしたのに!』
「あれ、
言ってなかったっけ?」
その日は美味しいうどんと茄子天を、
何故かちょっと悲しい気持ちで食べた。
時間的には昨日、
月曜日の未明4時。
飯休憩になった途端、
俺は先日のリベンジをすべく、
一度しか通ったことのない道を一人で歩き、
何度か怪しい客引きに声をかけられながらもスルーして、
紹介してもらったうどん屋に辿り着いた。
『今日は天丼を食ってやる!』
そう意気込み店の前まで行ってみると、
どうやら日曜の明けだけは閉店してるらしい。
別の店の美味しいうどんとレンコン天とから揚げを、
残念な気持ちで食べた。
今日、
まだ一時間経ったてばかりの火曜の未明4時、
昨日と先日のリベンジを果たすべく、
またも一人で紹介してもらったうどん屋へ。
同じように客引きに遭い、
同じようにスルーし、
店の前まで到着。
『今日こそ天丼を食ってやる!』
店に入ってトレーを取り、
注文してから流れるようにレジへ向かい清算するシステムははなまるうどんと同じだ。
『すいませーん、
ご飯大盛りひとつ!』
やっと天丼が食えるんだと、
俺の胸は躍っていた。
故に声も高らかになり、
ハリも出る。
「あい、
おうどんはよろしいんで?」
『はい、
ご飯大盛りだけで!』
自分好みのてんぷらを盛り付けられる天丼なんてなかなかないし、
それが安くて旨いときたらテンションも上がる。
てんや以来の天丼系マイフェイバリットになることだろう。
高鳴る鼓動をこらえきれず、
茄子天とゲソ天を取っている時に、
レジにいるおばちゃんが教えてくれる。
「今日もう丼タレないけどいいの?」
『え?』
「ごめんね、
天丼にするつもりだったんでしょ?」
極限まで高まっていた俺のテンションをどうしてくれるんだおばちゃん。
いやだがしかし、
おばちゃんに当たってもどうしようもならない。
非常に冷静に、
紳士的な態度で、
俺は落ち込んだ。
『あー…マジすか』
「どうしよっか?
ご飯とてんぷらだけにする?」
『じゃあとりあえずそれで…』
「でも天つゆなら出せるよ」
『じゃあそれで!』
天丼とは言えないが、
それでも天丼に近い物にありつけた今日の俺。
次に来るときこそは天丼を…ッ!
と思っていると、
茄子天だけで米が進み、
大盛りご飯が4分の1程度にまで減ってた。
『すいません、
ご飯の小ください』
「あい、
ご飯の小で!」
再び注文カウンターへ行き、
おじちゃんにご飯を頼んだが、
ご飯の小は明らかに少なかった。
『あの、
ご飯中ってありませんか?』
「小と大しかないよ!」
うぉぉぉぉいチキショウ、
なんで両極端なんだよ!
値段もそんなに変わらないし、
それじゃ大盛り頼んじまうに決まってるじゃねぇか!
そうなると今度は米が余るから、
もう一個茄子天頼んで全体のバランス考えちゃうだろうが!
・初回注文時
天丼ないのか、残念(だけど天つゆでも旨いからいいや)
・食事開始 60秒
茄子天が旨くて米が足らんな
・注文二回目 120秒
中盛がないなら大盛だ、あと茄子天もう一つだ
・食事開始 180秒
うん、ゲソ天も旨い。残り茄子天一つと大盛りご飯の2分の1だ
・食事開始 240秒
吐きそうだ
てんぷらが胃にあたえるダメージを忘れていたのか、
マジな話、
久々にちょっと危なかった。
僅かな時間の間に胃に詰め込みすぎて、
最後の最後水で無理矢理流し込んだ。
今現在、
気が付くと
『フゥ〜…』
と何かを落ち着かせるように、
胃の辺りから深い呼吸を繰り返す俺がいる。
食べ過ぎちゃダメだね☆
今度こそ天丼食ってやる。