ツナギを着てゴーグルを付けて、
おまけに髪の長い男がどう見ても武器でしかない物を作ってたら、
子供にはどう映るんだろう。
雨が降ってない平日は家の車庫で武器やら小道具やらを作ることが多い最近、
作業のことばかり記事にしてたり呟いてたりで役者であることを忘れられそうだが、
こんなんでも役者の端くれであり、
殺陣の技術が落ちないよう自主練してたり、
滑舌の練習だって怠けてるわけじゃない。
でも、
武器は作る。
今月に入ってからは雨がパラついてても休日でも作ってる。
先月ぐらいから車庫で作業してる時、
近所の子供が家の前で立ち止まっては少しそれを眺めていくってことが続いていた。
少年の目にはさぞ変なお兄さんに映ってることだろう。
おじさんに見えてないことを心底祈る。
気配を察知してても俺が見返したらどこかに行ってしまいそうで、
見たいなら見てればいいって感覚で視線を向けず作業を続けてたから、
てっきり代わる代わる色んな子供が作業を眺めてるモンだと思ってた。
が、
どうやらその殆どが同一の子供だったらしく。
人が作業してる時に車庫の中まで入ってきたんだから、
気配の方を見ないわけにもいかん。
というか随分勇気あるな。
手元から視線を外すと、
小学校2・3年ぐらいだろうか。
家から5分程度の場所にあるあの小学校に通ってるのは間違いないから、
干支が一周と半分は回ってる俺の後輩になるわけだ。
しかしその少年、
目を合わせてもしばらく沈黙しちまったからこっちも困る。
『どうした少年?』
会話を切り出してみるとやっとこさ返答がきた。
「前は剣作ってたよね?」
『おう、
見てたのか』
剣なんかいっぱい作ってるからいつのことかハッキリしないが、
大体家の前で立ち止まってた子供はこの少年のようで。
「作ってどうするんですか?」
今さっきの受け答えはタメ語だったのに次は敬語なのか、
と心の中で突っ込みながら素直に答える。
『使うのさ』
「何に?」
『あー、
使うってもあれだ、
舞台でな』
「舞台?」
『役者なんだよ』
「へー」
果たして少年に「役者」ってのが一体何をしてる人間なのか具体的に伝わったかは分からないが、
それだけ話すと友達の家に遊びに行くとかで、
そそくさと家の前から去っていった。
その名も知らぬ、
近所に住んでる少年だが、
今日また声をかけてきた。
自転車に乗って、
家の前の微妙な下り坂をそこそこのスピードで下りながら、
作業してた俺に向かって投げかけた言葉。
「ご苦労様ー」
だとさ。
『おーう』
と一言だけ返したが、
ご苦労様ってのは目上の人間が使うべき言葉なんだぞとこれまた心の中で突っ込んでおく。
また機会があれば、
殺陣での剣の振り方でも教えてみようかどうしようか。