2018年07月24日

炎天下青年

「あの、すみません!」

記録的な早さで梅雨が明けて、東京都心でも最高気温40℃という記録を叩き出してくれた今年の夏。
近所の自動販売機から家に戻るところ、背後から知らない声を投げかけられた。
ハキハキとして元気のあるその声の主は、長身で日に焼けている肌がいかにも健康そうな、若い青年。
高校生くらいだろうか?
日中屋外での作業や運動を控えろとニュースでもやっていたのに、肩で息をしている様子からして走ってきたのだろう。

(この暑さの中よくもまぁ…)

おまけに背中には大きな荷物を背負い、滝のように汗を流している。
当然知り合いでもないし、スポーツとの縁のなさが全身から溢れている俺にわざわざ声をかけてくるからには、どんな状況だろうと考えてみる。
さては脱水症状手前で、しかし彼はうっかりしていて財布を忘れてしまい、すぐそこにある自販機でポカリやアクエリアスでも購入するための150円だかを貸してください!みたいなお願いだろうか?
仮にそうだとしたら貸すどころか喜んで差し上げると言おう。
他人に臆せず、俺のような赤髪で作務衣を着てるような怪しく見える男であろうとも声をかけられる人間性を持ったスポーツ青年が暑さで倒れてしまうのは由々しき事態だし。
財布を握り直して彼に返答する。

『どうしました?』

「この近くに○○中央公園ってありますか!?」

おおっと。
予想外の質問がきた。
飲み物がほしいとかじゃないのか。

「グラウンドがあって、芝生があるような場所で…この近くだと思うんですけど…」

いや知らんがな。
グラウンドとか芝生とか殆ど縁がないんだぜ…。

ちらっと周りを見渡してみたが、流石に炎天下の昼下がりで近くには誰もいない。
道を聞けそうなのがふらふらしてた俺に聞いてきたんだろう。
汗だくスポーツ青年が手にしているスマホは画面が真っ暗で、察するに充電も切れてしまっているのだろう。
走ってきたからには待ち合わせ時間に遅れそうだったり、服装から判断するともしかしたら何かの練習や試合が待ってるのかもしれない。
分かりませんの一言で突き放すのも気が引けて、頭の中で必死に○○中央公園の場所を探す。

小さい頃友達と遊んだ公園、バッタを採ってた公園、塗装も剥れた不気味なパンダが座ってる公園…

そういえば、バッタを採ってた公園の横ではグラウンドがあった…ような気もしてきた。

『もしかしたらですけど、このまま道なりに進んで〜』

自信もないざっくりした道案内を聞くやいなや、一向に汗が引く様子もない青年はハキハキと言う。

「ありがとうございます!行ってみます!」

『違ってたらごめんなさい!』

走り出した彼の背中に、腹筋を使った声量で見送る。

地獄のような日差しは耐え難いが、夏もやっぱり悪くないんだよなと思える小さな出来事。

20180724.jpg

その後チャリで教えた場所が正解だったか確認しに行ったが、どうやら合ってたようで安心。
暑さで倒れるなよ、青年。
posted by アロゥ at 18:07| Comment(0) | 私事関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする